SIMPLE DSシリーズ Vol.48

THE 裁判員 〜1つの真実、6つの答え〜

※非18禁
メーカー 原画 シナリオ
D3 PUBLISHER 上田 メタヲ 遠藤 正二郎




総合点数 オススメ シナリオ CG BGM システム
160 95 25 25 10 15






啓蒙作品? いいえアンチテーゼ作品です

 青葉と〜
青葉

茉理
 末莉の〜

茉理
  イケてない
 エロゲーレビュー〜♪

青葉
でもレビューするのはニンテンドーDSの作品だからエロゲじゃないけどね(−−
青葉

茉理
今年は以前レビューした「Ever17」以来2作品めの全年齢作品のレビューとなる「SIMPLE DSシリーズ Vol.48 THE 裁判員 〜1つの真実、6つの答え〜(以下、THE 裁判員と略)」を取り上げさせて頂きました〜。

今年から施行された裁判員制度をテーマにしているので非常に興味深い作品なんですが、既に点数が結構高めなのはかなり面白かったとみて良いのでしょうか?
今回はあえてシナリオとテーマのみに絞ってレビューしていくけど、内容的には相当面白かったと言っても良いわ。但し、単に裁判ごっこが面白いとかではなくTHE 裁判員のテーマが当初思っていたようなものではなかったのが面白くなった要因ね。
青葉

茉理
確かにわざわざ裁判員制度(以下、員制と略)が施行された5/21に合わせて発売したくらいですから普通に考えたら員制を判りやすく説明した内容になると思いますよね? どう考えても知名度を知らしめるのと啓蒙するのが目的でしょうから・・・。
でも、そうじゃないのよ。THE 裁判員がここまで評価しているのは員制も含めた日本の法曹界の問題点や矛盾点に真っ向から立ち向かう内容だったからよ。

こう言っては何だけど、私も員制も含めて裁判の事なんてこれっぽちも知らなかったから全てをクリアしてから色々と感じる設定が多かったわね(−− 単純に有罪無罪を争う位にしか思っていなかったのに、それすらも違っていた事に驚いたわよ。

青葉

茉理
それは私も驚きましたね・・・・・・裁判になっている段階で有罪が確定しているんですから。あくまで裁判所という場所で争うのは被告人に対する量刑を決めるだけなんですよね(^^;;
そんな初歩的な事すら知らない人が大半なんじゃない? 本当にその意味で法曹界は件と断絶しているのよね〜。そんな状態で員制が施行されているんだから実際にゲーム中で裁判員達が因惑したり混乱するのは納得してしまうわ(−−
青葉

茉理
その意味ではTHE 裁判員はリアルだったんですね・・・・・・。

さて、ここらで作品のあらすじを軽く書いておきます。
主人公である五條 誠司さんが通り魔に襲われて不遇の死を迎えるも成仏できずに裁判所に居座る浮遊霊になってしまいます。そこにあの世の使者であるヤマヤマさんが訪れて誠司さんが成仏する為に員制で行われている冤罪も含めた『間違った裁判』を正しき方向に持っていく為に奔走する事になる・・・・・・というのが大まかなプロローグですね。
さつきも言ったように細かいシステムとかは省いてシナリオのみ語っていくわよ。まず第1話の「有罪を訴える女」が最初のシナリオだけに色々な場面が目に付いたわね。
青葉

茉理
私が気になったのが飲酒運転運転による危険致死罪なのに被告人の証言を鵜呑みにしたばかりに正しい検証も行われずに裁判まで来てしまったというのは驚いてしまいましたね・・・・・・それだけに弁護士が有罪から一転して無罪を主張し始めた時の裁判の混乱ぶりは凄かったと言うしかないです・・・。
何よりも被告人の証言のみで有罪無罪が決まってしまう裁判自体が怖すぎるわ・・・・・・しかし、本当の加害者とそれを庇う為に偽証している被告人の意見が実際の裁判であんなに矛盾に満ちているのがなんかのギャグにしか見えなかったわよ(−−
青葉

茉理
でも私が本当に現実は辛辣だと感じたのがこの裁判が無罪に終わった後ではないですか? 無罪になっても結局は職を失い、ネカフェ難民になった上、偽証罪で訴えられたり、本当の加害者との裁判になったり・・・・・・私には無罪判決が本当に良かったのかすら疑問に感じましたよ(;´Д`)  
あぁ〜、あの結末だけは本当にそう思うわ。身から出た錆とはいえ多少同情してしまうわね。
青葉

茉理
そして第2話の「逆説得 〜天文学的確率〜」ですが・・・・・・これも員制の致命的な欠点が浮き彫りになっている設定でしたね。
なんてったって裁判員が全て被告人と面識があるっていうのはねぇ・・・・・・サブタイトル通りにまさしく天文学的確率なのだけど、私が気になったのは無作為抽出の員制であっても裁判員の身元確認がしっかりと行われない杜撰さはちょっとあり得ないわよ(−−

昔の知人とかはともかく、自分の会社の愛人や取引相手の社長くらいは判りそうなものだけど。 

青葉

茉理
しかも明らかに有罪の証拠が多いのに被告人も決して罪を認めていない上に裁判員全員が無罪判決を言い渡すように結託するという普通では考えられない展開でしたからね(^^;;
これがフィクションであり得ないと一笑に付すのは簡単よ。でも実際にそうなったら防ぎようもないのも事実なのよね。たまたま主人公とヤマヤマが居たから解決した話であってもっと利害関係があれば恐喝や買収だってあり得ない話じゃないわ。
青葉

茉理
だから逆に誠司さんが憑依して完全に説得した時のカタルシスは凄かったですよw 明らかに有罪の材料を突き出して認めたくないと必死に反論する裁判員がちょっと滑稽でしたけどね(^^;;
その点では第2話は作品全体を通して最も憑依するシステムを活かしたお話だったのよね。

そして問題なのは第3話の「絶対固定量刑」でしょう。全話通してこんなにも印象が残った話になるとは夢にも思わなかったわね。

青葉

茉理
・・・・・・本当に色々と考えさせられるシナリオでしたね。恥ずかしい話ですが外患誘致罪なんて全然知りませんでしたよ・・・・・・。
普通知っている人間なんて居ないわよ(−− 実際に作中でも秋月 芽依子に訪ねたら「質問がないので知っているものとばかり・・・」と返すくらいだもの。色んな意味で一般人と法曹界の断絶って凄いと思ったわ。
青葉

茉理
それにしてもタイトルの絶対固定量刑という意味も嫌でも感じるシナリオでしたね・・・・・・これは日本の裁判制度に対する久宝寺 千鶴子さんの挑戦だったんですね・・・・・・。
事実上、日本国民に『死人』が出ていないけど『侵略』はした訳だしね。それでいて罪状は一切を認めているから明らかに有罪だけど判決は固定されているから『死刑』のみ・・・こんなのを員制で裁断する必要性があるのが疑問よね(−−
青葉

茉理
しかも裁判員の中には死刑反対の人権団体の人も居ますから・・・私にはFukkoさんこと小林房江さんの「裁判に関わるのがおぞましい」という言葉はよく判りますよ。
そんな罪状の裁断を一般市民に委ねる司法というのも信用できないわね(−− 実際に作中で地裁と最高裁の対立が少し書かれていたけど人の命を玩具や取引材料に扱うのには虫酸が走るわ(−−メ
青葉

茉理
最終的には外患誘致罪を適用して死刑判決を言い渡しますけど、その経過については私は全シナリオの中で最も印象が強いですね。どう考えても死刑以外に余地がない被告人に対して有罪判決を言い渡すまでの説得は苦しかったというしかないですし・・・・・・。
そしてあの結末でしょう? あれは本当に司法や日本に対しての皮肉以外の何者でもなったと思うわ(−− 『罪』を裁く事が出来ず、思想や立場からしか反論や対立できない国民を被告席からあざ笑っていたんでしょうね。
青葉

茉理
本当にそうですよねぇ・・・・・・。
で、第4話の「7人目の裁判官」ですが3話の印象が強くてちょっと薄れがちですが内容的には第1話と展開は似ていますね。
1話は弁護人が罪状認否で否認したけど、今回は被告人自ら裁判中に罪状を否認してしまったのよね。今回のケースは1話同様に自白を最有力の証拠としてしまったばかりに発言が二転三転する被告人に検察も弁護人も振り回されるコメディ仕立てになっていたわ。
青葉

茉理
じっ、実際にはコメディではないんですけどね(^^;;
いや、これはコメディよ。被告人以外は大真面目に取り組んでいたのを被告人の発言でひっくり返されるけど被告人は屁とも思っておらず自由奔放に振る舞っている。これが喜劇でなくて何ていうの? それなりの労力を使って用意した証拠も資料も無に帰してしまうんだから。
青葉

茉理
何よりも自白の証拠自体が強要されているのも判ってくる辺り、司法以外の警察の捜査にも疑問を投げかけていますね。
結果的に真犯人の醜悪さとか被告人の無罪になったとたんに豹変した姿とかは割合失笑モノだったわね。ライターの人がOHPで語っていたように実際に傍聴したのを取り入れているらしいからリアルでもこの手の輩が居ると言う事でしょうね(−−
青葉

茉理
そして最終話の「その、判決」ですが如何だったでしょうか?
このシナリオは本当にオーソドックスな裁判モノのシナリオだったんじゃない? 明らかに有罪の被告人を打ち崩せない検察側、それに成り代わって主人公が被告人と正々堂々と対決していくというのは。
青葉

茉理
まさしく『因縁』の対決でしたからね・・・・・・誠司さんはともかくとしてもまさかヤマヤマさんもそうだったとは思いませんでしたけど。
オーソドックスとはいえ展開はかなり違っていたけどね。被告人は黙秘しているんではなくて話す必要性がないから黙っているだけというのは興味深かったし面白い部分でもあったわ。
青葉

茉理
それをいかにして崩していくかという部分にカタルシスがありましたね。
結局のところ、親も司法でも被告人の心は理解できなかったのよね・・・・・・それを理解できたのが『死んだ』経験をした主人公と被害者の親だけというのが切なかったわね。
青葉

茉理
でも私が注目したのは誠司さんの心情の変化ですね。最初は本当にただ有罪へと持ち込もうと躍起になっていたのが第4話での再会と裁判で証拠が出揃ってきてから被告人の心情を理解し始めてから間違いなく変わりましたよねぇ〜。
小娘の言う通りで焦りが消えて本来の裁判官の役割を全うしようと奮闘するのがおそらくはシナリオライターが最も書きたかった本来あるべき理想型の裁判官の姿なんじゃないかしら? 
青葉

茉理
文字通り『間違った』判決を防いであるべき裁断を行うというのは納得ですね!
それでも決して誰もが気持ち良く判決を言い渡せる事は出来ない。それが現状における員制と裁判システムの限界だと思うわ。でも、その中で出来る事に最善を尽くし責任を全うするしかないというのをライターがTHE 裁判員を通じて描いたんでしょうね。
青葉

茉理
もし、青葉おねーさんが裁判員になったらどうします?
そんなものは最善を尽くすに決まっているわ。人の一生を決めるような偉そうな権限はないけど、だからといっていい加減に決めるような真似は絶対にしたくないわよ。当然でしょう?
青葉






シナリオ

 偶然ではありますが同日に同じ裁判員をテーマにした「有罪×無罪」という作品もありますが決定的な違いは有罪×無罪はどちらかと言えば員制を啓蒙する(または推奨する)作品に仕上がっているのに対してTHE 裁判員は啓蒙どころか批判的、もしくはアンチテーゼとして存在している事にあるでしょう。

 ライターの遠藤 正二郎氏は知らない方ですが相当法律や法曹に詳しい方と見受けます(もしくは監修する人が優秀なんでしょうね)。現在の裁判システムの抱える問題点や員制の欠点をしっかりと把握して作品に活かしている手腕は凄いというしかありません。正直な話、DSという携帯ゲーム機で遊ぶ作品という事で舐めてかかっていましたが見事に返り討ちに遭いました。全5話からなるシナリオにしても各シナリオによって随分と色合いも異なっていました。気軽に員制に参加したら内容が外患誘致罪で死刑を言い渡す立場になったら逃げ出したくなりますって((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル そして絶対に有罪と思っていたら被告人が否定したら白紙に戻って何が正しいのか判らなくなるといった辺りも実にリアル。人を裁くプロセスの複雑さ、それに反するようにシステムの杜撰さを肌で実感できるシナリオでありました。もし容易に被告人に対して有罪無罪の二者選択だけの安直なシステムだったら本気で嫌だなぁと思います。もし被告人という立場になった時にゲームの延長線上で裁かれたくないですって! たがらこそ明確に有罪無罪を判別して正しい方向に導くシナリオには好意がもてました。

 それにしても氏の描くキャラクターが実に人間臭くて良かったのも評価の1つですね。第2話の被告人と元妻の罵り合いとか第4話の被告人の狼狽えようとか、裁判員の評議における考え方の違いや立場の違いとか・・・・・・実際の員制もこんな呉越同舟の中で決める訳ですからおそらくは一般市民が思っているよりも遙かに難しく容易ではないシステムなんでしょうね。


原画・CG

 原画とキャラデザはエロゲではお馴染みの上田 メタヲ氏。プレイすれば判ると思うのですがとにかくキャラクターの描く訳のバリエーションの豊富さは凄いというしかありません。登場キャラだけでも60人近く、その差分も含めれば100パターンは描いていると思います。数あるエロゲ絵師の中でもここまで引き出しの多い人は居ないんじゃないかなぁ? イベントCGが少ないとはいえ、老若男女を数多くこなせるのは地力の賜物以外にないでしょう。

 その中でも数多くの印象的だったのは被告人の『目』でした。特に第3話の久宝寺 千鶴子と最終話の被告人の2人。間違いなく罪を犯したその目は印象に残っています。「目は口ほどにものを語る」という諺がありますが、最終話で加勢検事が見た被告人の目で有罪を確信したというのも頷けるほど印象に残ってしまう眼力でした。


音楽・BGM

 流石にDSの作品で良質の音源は望めませんが各話のタイトルバックは印象的。この荘厳な曲を聴かないとシナリオが始まらないと思いました。


システム・操作性

 とにかくプロセスが多いので略しますが延べ3日間の間にの証人尋問や弁護側、検察側の陳述、被告人への質問から評議に必要と思われる情報をピックアップして1日の終わりの評議で他の5人の裁判員と3名の裁判官の説得を行うのが主なシステムですがこれが結構難しい。裁判員(または裁判官)なによっては安易な情報ではユーザーが持っていきたい方向に靡かないので説得が一苦労。それだけに説得が達成できた時は嬉しいのですがw まあ3日間あるのでそれほど難しくもないのですけど。それでも見た目にはアレな風貌のキャラでも筋道を立てて話をすれば説得できますし、むしろ知的なキャラの方が説得は難しいですね(第3話の仲本みたいなオバサン)。その意味ではキャラクターによって振る情報の選択が重要なゲームと言えますね。

 ただ、あえて欠点を挙げるならコンシューマーにありがちなバックログのない点と、4話以降はキャラによる情報の振り方が単調になってしまっている事でしょうか。最後は決定的な情報が決まっているので仕方ないとはいえちと残念でしたね。


オススメ度

 価格が安いという点も挙げられますがやはり安易な員制推奨の作品でなかったの事が大きい。むしろ「員制は矛盾に満ちた制度だから自分というものを見失うな!」というアンチテーゼを含んでいたのが大きかったですね。この難しいテーマを1つの作品にした功績は私にはとても大きかったです。もしプレイしていなかったら員制を正しく理解できなかったと思うし。

 人が人を裁くという行為に掛かるプロセスと労力、そしてその裏にある権謀術中・・・・・・ただ世の中の良い悪いを裁くのが裁判ではないのが今回のTHE 裁判員で判ったのが最大の収穫でした。エンターテイメントとしてもテーマを重視した作品としても屈指の出来だったとここに書き記しておきます。


My Favorite's

 終わってみれば印象に残っているのは法廷では決してぶれなかった久宝寺 千鶴子と立場的には冷静に徹するべき検事だった加勢 憲悟(かせ けんご)、そして勝呂 真(すぐろ まこと)ですか。

 いずれも方向性は違えど人間臭くて好きなキャラ達でした。特に加勢さんは度々失敗しますが自分の気持ちは決してぶれていなかった・・・・・・この人の情熱には感動しましたね。勝呂は・・・・・・あえてネタバレは避けますが最後の台詞を語った時の表情は見てみたかったですね。彼がこの裁判で得たものこそが員制が存在する為の理想的結末だったと思います。


備考

 DSで手軽に楽しめる低価格作品という事で舐めていましたがそれを遙かに上回る内容に満足の一品。難しい用語が連発していましたが、色々な問題を抱えつつも員制はスタートしています。自分が選ばれた時、果たして五條 誠司のように振る舞えるのか・・・・・・出来る出来ないは別としても心構えはしておきたいと思います。

 そして最後に一言。

 れ・ざむる〜ずは2009年祭優秀作品の筆頭候補にTHE 裁判員を挙げておきたいと思います。 

 色々とご意見もありますがこの感想だけは決してぶれたくないと思います。




2009年06月05日 草薙静流




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